カーテンコール2012

カーテンコール

夢破れて、夏 3年目のリグレット

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学校なんか嫌いだったけど、
「NATS軍団」の伝統はオレが守りたかった…

日本自動車大学校3年 馬場裕平
2011年東大会 4位
2012年東大会 1回戦敗退

出たくても出れなかった2010年

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100名以上がパイロン卍の成功率で半分以下に絞られるドリコンなんて、学ドリをおいてほかにない。
 このような特殊な予選方式が決まった理由はふたつある。ひとつは公平さ。大会開催地で練習できるひとは限られる。遠方の参加希望者には負担だろう。そこで、だれもがおなじ条件で、純粋にテクニックを診断する方法はないか…と考えて導きだされたのがパイロン卍なのだ。
 そしてもうひとつ。カンタンそうでも、1発勝負で1台づつ全員のまえで挑戦するってのは、決勝戦とおなじ緊張感を味わうはず。プレッシャーに耐え切れず、できることもできなくなる。これはD1でもおなじ。つまり、学生ドリフター全員に、最上級の緊張感を味わってほしかったんだ。
 そりゃあしょっぱなはすごい反響だったよ。「そんなのやったことない!」「せっかくコースを練習してきたのに!」などなど、審査員に食ってかかるヤツも少なくなかった。
 しかし、ドリ天は押し切った。そして、参加者に受け入れられ、いまとなっては学ドリの本質にもなっている。パイロン卍には、言葉では現せない、体験した者にしかわからないむずかしさがあるんだ。
 職人ばりに正確に刻む者もいれば、最低限のアクションでミスを抑える者もいる。なぜかパイロン卍に芸術を求め、想像を絶する進入スピードで「みんなのドギモを抜いてやる」とばかりに失敗を恐れないクレイジーなヤツもいる。
 そこで生まれた賞が「パイロン王子」。100点を超えるパフォーマンスを見せた者だけに与えられる称号だ。通ればいいだけの予選に、決勝とおなじだけの気迫で挑むのだから、成功した者は評価される。参加者全員が讃える。
「優勝できなかったとしても、パイロン王子は狙いたい」と夜な夜な練習している学ドリ予備軍も多いと聞く。学ドリは表彰台に登らなくてもヒーローになれるんだ。
 パイロン卍を笑う者はパイロン卍に泣く。1年間の努力が朝イチに水泡に帰す可能性もある、シンプルでデンジャラスなドリコンの新しいカタチ。学ドリの予選は、それだけでどんなイベントよりも見応えがある。

3年目の超本気

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 かつて浅沼さんが驚異的なパイロン予選を見せつけて準優勝したのも3年目、姉帯さんがチャンプになったのも3年目、そして今年は自分が3年目。NATS、そしてモッコマンズとしては結果を残さなくてはならないと必死でした。
 それまで乗っていたJZX90からJZX100に乗り換え、タービンも交換し、いいわけできないクルマを作り、日光に通って練習を重ねました。
 そして迎えた学ドリ当日。黄色2台で登場してインパクトは抜群。つかみはオッケーでしたが、練習走行2周目でまさかの身内クラッシュ。車内からはくの字に曲がったボンネットが見え、本気で終わったと思いましたが、ボスと浅沼さんの作業でクルマは走れるようにしてもらい、それからは順調に…のはずでした。
 迎えた予選。「もうすこしカベに…」と欲がでてしまい、ハンドルをワンテンポ遅くして振り返したためにカベに激突。結果はガッツが認められてパイロン王子で1位通過させてもらいましたが、おせじにもカッコいいパイロンとは言えず、自分のヘタさに落ち込みました。
 一方、田口は予選落ち。かける言葉も見つからず、同時に「オレらはナニをしにきたんだ」と泣きそうになってしまいました。
 夜になってチームのみんなが仕事を終えて続々と日光に駆けつけてくれ、ふたりでたくさん叱られ、たくさん励まされ、やるしかねぇと気合いを入れて2日目。
 田口は敗者復活でまわりを圧倒する走りを連発して見事に通過。つぎは自分も!と練習走行に出るとそれなりに手応えを掴め、1回戦もこのまま…と思ったのでしたが、1本目にミス。2本目もミス。あまりにもあっけなく、まったく実感の湧かないままボクの夢は終わりました。
 ミスした瞬間、自分でもわかってました。こんなんで通るワケないと。でも、奇跡を信じてました。しかし、それが叶うことはなかった…。 
 オレはもう終わったんだと自分に言い聞かせようとすればするほど涙が止まりませんでした。あんなにつらい思いをしてバイトをがんばって練習してきたのに…。
 それ以上に、チームのひとたちにもまわりにひとたちにも、こんなに巻き込んで期待させてきたのに、会わせる顔なんかありませんでした。
 こうしてボクの学ドリは幕を閉じました。あっけなさすぎてなにも言葉がでませんでした。

自分のために勝ちたかったワケじゃない

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 今年の学ドリは自分のためというよりも、むしろまわりのひとたちのために走ろうと決めていました。
 千葉にきてからガレージヤマグチ、モッコマンズとの出会いがなければいまの自分はありません。クルマを壊すたびに面倒を見てくれたボス、後輩のために嫌われ役を買ってでてきれた浅沼さん、チームに入るまえから「オレの後輩だから」と目をかけていてくれた姉帯さん、言葉はきつくともいつも後輩のことを思ってくれているクラッシャーさん、黒澤さん、アニキのようなテッサン、ゆうたさん、茂木さん、羽生さん、茶園さん。そして、こんなオレを先輩だと言ってくれる田口。ガレージヤマグチに集まるひとたち。このひとたちがいたからここまでがんばれました。
 みんなに「オマエを勝たせてやりたい」とたくさんのことをしてもらいました。
 学ドリに出たことで名だたる学ドリOBのかたとも交流させていただき、練習に呼んでもらったりわざわざ当日に日光にきたもらったり、たくさんめんどうを見てもらいました。
 きっと学ドリに出る、勝つ、という目標をもって走っていなければ、こんな出会いもなかったと思うし、こんなにいい環境にはいさせてもらえなかったと思います。
 NATS生! これまでの数々の先輩が学ドリで残してくれたNATSのカンバンをこれからも続けてほしい! 本気で学ドリやりたいならストリートでもサーキットでも本気で走ってバイトして本気でがんばれ! 年がうえのヤツは後輩を大事に! 下のヤツは先輩を大事にして「NATS軍団」と来年も呼ばれるようになってくれればうれしいです。
 結果こそくやしい終わりになってしまったけど、学ドリに出られて、学ドリにがんばってきて本当によかったです。学ドリを終えた先輩たちが「こんな大会はほかにない!」と言ってる意味が、いまならわかります。
 学ドリサイコー! ドリフトサイコー!

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