グッバイヒーロー

グッバイ、ヒーロー

記録より記憶、最後の学ドリチャレンジャー

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最高のチャレンジャースピリッツの持ち主

[東大会]清水智裕  群馬自動車大学校

日光のムードメーカーは、最後まで学ドリオバカ精神にこだわった!

毎年たくさんのメンツを送り込んで来る群馬自動車大学校の学ドリ参加メンバーが所属するチームは、大きくわけてふたつある。去年の2位4位が所属する「ストリートジャンキーズ」と、清水くんが所属する「いのししれーしんぐ」だ。
ストジャンのイメージは「速く、低く、ドレッシーに」だけど、いのししRのイメージは180度ちがう。「独創的で、変態チック」とでもいえばいいんだろうか? まったく失礼な話だけど、メンバーのクルマ作りを見れば……ねぇ!?
なかでも最強の変態キャラがこの清水。クルマの作りもすごいけど、カメラを向ければツナギを降ろしてケツを出すし、コメントを書かせれば放送禁止用語の連発。クルマは缶スプレーで全塗して、軽量化のためにボディのあちこちを切除。去年はターボだったのに今年はNAなんだよ。記念すべき最後の学ドリなのに、どーゆーこと?「1トン切るためにはターボは不要!」とか言って、やっぱり変態だ。
 そんな彼が、ついに歴史に名を刻むときがきた。なんとパイロン卍でトップ通過! テンパータイヤに履き替えて抜群の走りを見せつけたのであーる!
「去年は2回戦までいったのに、ドリ天にも学ドリ白書にも?1回戦敗退?って書かれててショックだった。記憶に残れなかったのか…」と応募書類に書いてあった。最強の目立ちたがりとして屈辱だったのだろう。
 すげぇ走りするのに、クルマから降りると変態モード全開。去年も今年もマトモな顔で写真を撮ったためしがない。それでいて秘めた闘志はひといちばい。ある意味ドリフト野郎らしい。学ドリいちのナイスガイだったと認めよう!

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もっともドラマチックな2日間を味わったオトコ

[東大会]高信徹寛  埼玉大学

500円サビハチの変態はたんなる“汚れキャラ”じゃなかった!

 去年の東大会でいきなりパドックのヒーローになったサビサビのハチロクが、今年も参加してきた。さらにサビサビが進行し、もはや解体車より汚い。去年のくれくれタイムでゲットしたBNスポーツのエアロだけが真っ白で異様だ。でも、なんかこう、すごみを増してるとでもいえばいいのだろうか。
 埼玉大学の自動車部に所属する彼は、朝からたくさんの後輩たちと学ドリを楽しんでいた。メイド服を着た女のコを何人も揃えてバーベキューしてた。
 しかし、調子よくフリーを終えて、ルンルンで予選に出走した彼に、悲劇が襲った。
 去年は余裕で通過した予選で、痛恨のコースアウト…。学ドリのために装着したエアロは自分で踏んで一瞬でバキバキになってしまった。見守っていたBNスポーツさんも苦笑いだ。
 そして夜の部では強烈に酔っぱらい、真夜中に管制塔にきて「彼女の誕生日だから祝ってくれ」だの「古口っちゃんのビンタがほしい」だの、とにかく仲間と騒ぎまくっていた。イチモツだけ隠して脱いで騒いでるヤツは多かったけど、ヤツはカンペキに全裸だった!
 翌日の敗者復活戦。昨晩の姿を考えると期待できそうもない。80名から10名選出だからね。ところが、走りは冴えまくり2位通過!そのまま1回戦も通過! もしかして…と思わせたけど、ここで終了! 
 ま、結果は残念だったけど存在感は大きかったよね。来年からあのサビサビが見られなくなると思うと寂しいかも。
 とまぁ、ここまでならたんなるオバカなヤツだなーで終るところ。だけど、みんなに彼の応募用紙に書かれた内容のいちぶを読んでもらいたくてさ。
「今年は後輩のぶんと3名で応募しています。ウチの部活もたくさん新入生が入り、盛り上がっています。なかでもふたりは精鋭だと思います。みんな学ドリに向けてアホみたいに走りにいっているので、どうか採用してください。出場に制限があるなら後輩優先でかまいません。ふたりの集大成だと思うので、ぜひ、出場させてやりたいのです」と締めくくってあったんだ。
 コイツ、すげーいいヤツじゃんかよ! たんなる変態の目立ちたがり屋じゃなかったんだねー! グッバイとは言ったけど、もう1年だけ留年してもいいぜ?

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2年連続エンジンブローからのリベンジ

[西大会]岡村啓左  ホンダテクニカルカレッジ関西

予選敗退だったけど、くれくれタイム最後の1周まで笑顔で全開!

 初参加の多い西日本大会において、今年で4回目の最多出場が岡村だ。ずっとおなじキャンディーピンクのローレルで参戦してきた。
 2007年は予選敗退、翌年、翌々年は予選通過、しかし、これまで2回戦に進んだことがない。なぜなら、2回とも予選通過後にエンジンブローでリタイヤしたからだ。
 ちなみに名阪は彼の自宅から10分。まさしくホームコースだ。ベスト8に残るくらいのテクは身につけている。そして今年はラスト。
「勝ちたいとか優勝したいより、最後の今回は最後まで走りたい、笑顔で終えたいってのがあります」とは参加表明のコメント。
 今年はショップのコンプリートエンジンを載せて挑んだ。オカネはかかったけど絶好調だ。しかし、勝負の女神は彼を見放した。パイロンタッチからリズムを崩し、メロメロで予選を終えた彼の名前は、1回戦進出者の名簿になかった。
 学ドリを終えて、彼からメールが届いた。「今年の目標は楽しむことなんで、結果はぜんぜん悔しくなかったです。最後のくれくれタイムの走行は、これまでにないくらい楽しかったです。いままでのドリフト生活でイチバン楽しかった! これまでの学ドリは勝ちたいとかにこだわって、楽しむことを忘れてました。そのことに気づかされた大会にもなりました。過去4回のなかでサイコーに楽しかったです!」と。
 それには気がついていたよ。たしかに彼のくれくれタイムでの走行は、ほかの参加者とはちがってた。まるで優勝決定戦のようなギリギリの攻めだった。自分の限界をちょっと超えるくらいの?果敢な攻め?で、いきなりコースアウトしてた。だけど、ウインドウごしに見た彼の表情は、悔しさなんて微塵もかんじさせないノリノリで満面の笑みで、コースに復帰すると、またなんどもなんども奥まで突っ込んでコースアウトしてた。
 最後まで笑顔で全力で走る。
 彼が自分に課した約束は、きっちり守られたのだった。