2010東西統一王者

見た目はイカチーけど、
勝ち進むたびに緊張感との戦いだった

　彼が通う日本自動車大学校（ＮＡＴＳ）は、学ドリにおいて多数の生徒を送り込んだ常連校。今年も数名がエントリーしていたんだけど、そのなかで＂もっとも表彰台に近いオトコ＂と目されていたのが姉帯くんだ。
　彼の持ち味は「パッキーン」と勢いよくつけるクイックモーション。２００８年に準優勝だった学校のセンパイでもありチームのセンパイでもある浅沼くんを師匠とあおぎ、この１年、まさに二人三脚でがんばってきた。たしかに浅沼くんを思わせる走りに見えたのは、ボディカラーがおなじだからだけじゃないと思う。いわば継承者ってことだね。
　シルビアのポテンシャルも高く、音もルックスも派手で、ひとめ見て＂勝てるクルマ＂と言える状態。しかも、運転してるのは金髪ボウズのイカチー系。日光のパドックではひときわ目立っていた。
　しかし、ドリフトにおいてはかなり緊張しやすいデリケートな性格。「勝てるって言われてたのもあって、ひとつ進むたびに緊張しちゃって…。振り出しの位置とかブレちゃうんです」とか言って、このナリした男が負ければ泣き、勝てばまた泣くんだから学ドリってのはつくづくドラマチックだよな。
　東大会の準決勝で負けた原因は、緊張のあまり振り出しのポイントがそれまでとちがっちゃったから。自分でもわかっていたみたいで、パドックに戻ってきたらクルマのそばでずっと泣いていた。
　そこで仲間に「統一戦があるからそっちでがんばれ！」って励まされたのと、くれくれタイムで走ったことで緊張感がほぐれたのとで、統一戦ではきっちり実力発揮。「みんなのおかげで表紙にもなったし、やっと恩返しができたと思います」と表彰式のもりあがりようったらハンパじゃなかった。でも、終って２ヶ月たったいまも、東大会の成績を引きずっているそうだ。
　東大会３位、統一戦優勝ってのはなんだか意味がわかりずらいリザルトになっちゃったけど、総合的な実力（その場の緊張感によるミスを抜いて）を考えても、今年の２２４名のなかで５本指に入ることはまちがいない。いや、準決勝、決勝と破った相手は東西のチャンプ。掛値なしの統一チャンプだよね！
　ただ、最終的に勝てたのは、背負ってる仲間の想いだったのかもしれない。メーターやミラーには仲間からの熱いメッセージが書かれ、とくに浅沼くんが書いた「しっかりと加重移動・奥で蹴れ」をバックストレートで毎回見てイメージしたそうだ。
　学ドリ挑戦を終えたチャンプに（来年の春には卒業予定）これから学ドリに出場するひとにのメッセージを聞いたところ「本気になること！　絶対できないことはない！　その努力にまわりのひとが応援してくれる！　あと、先輩たちを大切にしろ！」とのこと。きっと彼もそう言われて、ここまで強くなったんだろうな。